森博嗣『人間のように泣いたのか? Did She Cry Humanly?』

森博嗣 Wシリーズ

こんにちは、はっこんです。

今回の記事では森博嗣さんの『人間のように泣いたのか?』を読んだ感想を書いていきたいと思います。

※本記事は『人間のように泣いたのか?』を読まれた方に向けて書いたものです

※以降ネタバレを含みます、ご注意ください

『人間のように泣いたのか?』はWシリーズの第10作目です。

登場人物

  • ハギリ・・・・・・研究者
  • ウグイ・・・・・・情報局員
  • アネバネ・・・・・情報局員
  • キガタ・・・・・・情報局員
  • シモダ・・・・・・情報局長
  • ヴォッシュ・・・・科学者
  • パティ・・・・・・助手
  • アカマ・・・・・・研究者
  • デボラ・・・・・・トランスファ
  • アミラ・・・・・・人工知能
  • オーロラ・・・・・人工知能
  • ペガサス・・・・・人工知能
  • カンナ・・・・・・人工知能
  • マガタ・・・・・・二世紀前の天才科学者、ウォーカロンの生みの親

あらすじ

生殖に関する新しい医療技術。

キョートで行われる国際会議の席上、ウォーカロン・メーカの連合組織WHITEは、人口増加に資する研究成果を発表しようとしていた。

実用化されれば、多くの利権がWHITEにもたらされる。

実行委員であるハギリは、発表を阻止するために武力介入が行われるという情報を得るのだが。

すべての生命への慈愛に満ちた予言。

知性が導く受容の物語。

内容

第1章 非人道的に Against humanity

キョートで開催される国際会議の実行委員としてキョートへ行く。

レセプションが始まる。

シモダから、日本政府がホワイトの発表を武力的に阻止することを伝えられる。

第2章 彼らの人間性 The humanity of them

ウグイに例の事を話し、アカマの代わりにウグイが司会補佐を務めることに。

セッションの打ち合わせ中、ウグイと共に何者かに連れ去られる。

謎の部屋で目を覚ます。

ペガサスが現れ、話す。

第3章 人類全体 All humanity

ウグイと共に脱走する。

追手から逃れ、ホテルに避難。

ホテルで偶然アカマと会う。

アネバネとサリノが救援にくる。

第4章 慈悲をもって With humanity

建物を出た途端に、敵から襲撃を受ける。

地下を通って逃げる。

電車に乗って逃げるも、再び襲撃を受ける。

リキューまで行き、マガタ・シキと対面する。

メモ

  • ドイツあるいはメーカが人間が妊娠しない条件の定量化を発表する予定
  • サリノは暗算が得意、アネバネはチェスが得意
  • ポスト・インストールをした場合、不良品になる確率は15%
  • メーカは出産可能治療に多額の投資をしている
  • イシカワはその治療の開発競争に敗北している
  • ペガサスが武力介入を促した可能性
  • ウグイの卒論は万葉集に隠された記号と予知
  • イシカワは治療技術でリードしており、ホワイトがデータを奪おうとした可能性
  • それをカンナが阻止し、情報局に渡した可能性
  • イシカワを吸収するため、ホワイトが治療技術をもって新ビジネスを発表する可能性
  • 日本政府の関与を疑われないよう、単なる身代金目的の犯行と発表する可能性
  • イシカワの間違ったデータを利用し、ホワイトは治療技術を開発した
  • カンナが残したチップも、アポロまで取りに行ったチップも価値のあるデータはなかった
  • 逆にホワイトに誘拐されてしまった可能性
  • 会ったペガサスは偽物である可能性
  • ホワイトの人間たちは誘拐されなかった
  • すべてがホワイトが偽装したものである可能性
  • 誘拐をしたのも、襲撃をしたのも、反世界勢力側の人工知能達
  • アミラ、デボラ、オーロラは早期に中立宣言
  • 対面したマガタ・シキはロボットではない
  • 100年前、キョートで起こった殺人事件の現場はリキュー

感想

圧巻でしたね。Wシリーズ最終作として素晴らしい作品でした。

ストーリーの展開速度が自分の許容を超え、ときどき立ち止まってしまう部分もありました。

内容がおもしろすぎて、鳥肌を感じてしまうような場面も、そんな一冊でした。

読了してからタイトルやあらすじの意味を考えると、点が結ばれるように納得できますね。

本作ではハギリとウグイの会話が多く、時には1人でニヤついてしまうような場面もありました。

また、涙が出そうになる場面も。

確かに、ハイレベルな人工知能が完成したら、人々はそれを恐れて排除しようとするかもしれません。

結構リアルですよね。

そうやって戦うことで活路を見つけてきた人間でも、理性や知性をもって人工知能との共存を目指すべきという言葉には胸を動かされました。

ウグイか流した奇跡的な涙にボクもつられてしまいそうに、、笑

タイトルの「人間のように泣いたのか?」というのはウグイのことだったのかと。

しかし、ただウグイが泣いたことだけでは無いような気がします。

そこで森博嗣さんのHPでは、本作品についてこのようなことが書いてありました。

’もともと、英題の主語はItだったのですが、書き上げたあとでSheに変更しました。一言でいえば、「歩み寄った」という感じでしょうか。’

これは考える必要がありそうですね。

ハギリとウグイはもともと人間のはずですね。

しかし人工細胞を体内に取り入れたことにより、永久的な寿命を得て、生殖機能を失っています。

それは本当に人間と呼ぶことができるのでしょうか。

おそらくこのウグイが涙を流したシーンで、ハギリとウグイは人間に「歩み寄った」ということでしょうかね。

また、物語終盤ではハギリはマガタ・シキに対して、

「失礼を覚悟でおききしますが、博士は、人間でしょうか?」と質問しています。

これに対し、マガタ・シキは、

「はい、それは失礼な質問ではありません。誰に対しても、また、自分に対しても、いつでもそれを問うことが、人間というもの」と答えています。

ハギリがマガタ・シキにこの質問をしたのは初めてですね。

このことからもハギリが人間に「歩み寄った」ということが読み取れますね。

人間に歩み寄ったというのは、ハードではなくソフトのことでしょうね。

(もしかしたらハードも関係あるかも、、)

やはり本作、そしてWシリーズの締め括りにはマガタ博士は必須ですね。

返ってきた器を眺める一流の料理人のように、彼女も自分が蒔いた種の後の世界を眺め、何も考えずに月夜の空でも眺めているのですかね。

Wシリーズが終わってしまうのは本当に悲しいですね。

本棚に戻したくないです笑

個人的には人工知能の争いに巻き込まれてしまったハギリ、そしてハギリを護ってくれたウグイ、アネバネ、サリノにお疲れ様でしたと伝えたいですね。

今でも、人間は個人の感情に支配されている。好きか嫌いかで味方か敵かを決めてしまう。そういった未熟さという愚かさというのは、長く続いてきた宗教による争いにも発端がある。文化が違う、生まれた環境が違う、受けた教育が違う、というようなことで相手を区別し、排除しようとしたんだ。今でも、その血が残っていると思う。とりあえずの平和が実現して、大勢が一時的に黙っているだけで、なにか突発的なことが起こった場合、一気に不満が高まって、暴力的な噴出があるかもしれない。それは、これまでの歴史を知っていると、絶対に否定できない。人間というのは、基本的に戦うことで活路を見つけてきた。勝つこと、生き残ることで、自分たちを確かめてきたんだ。

しかし、だからといって、諦めて受け入れてしまうのはまずい。理性や知性で、それらを修正していくことこそが、人間らしい能力なのだから。

ハギリ・ソーイ

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