森博嗣『幻惑の死と使途 ILLUSION ACTS LIKE MAGIC』

森博嗣 S&Mシリーズ

こんにちは、はっこんです。

今回の記事では森博嗣さんの『幻惑の死と使途』を読んだ感想を書いていきたいと思います。

※本記事は『幻惑の死と使途』を読まれた方に向けて書いたものです

※以降ネタバレを含みます、ご注意ください

『幻惑の死と使途』はS&Mシリーズの第6作目です。

登場人物

  • 犀川創平・・・・・・・・建築学科助教授
  • 西之園萌絵・・・・・・・建築学科4年生
  • 国枝桃子・・・・・・・・建築学科助手
  • 西之園捷輔・・・・・・・愛知県警・本部長、萌絵の叔父
  • 佐々木睦子・・・・・・・愛知県知事夫人、萌絵の叔母
  • 有里匠幻・・・・・・・・マジシャン、匠幻の弟子
  • 有里ナガル・・・・・・・マジシャン、匠幻の弟子
  • 有里タケル・・・・・・・マジシャン、匠幻の弟子
  • 有里ミカル・・・・・・・マジシャン、匠幻の弟子
  • 原沼利裕・・・・・・・・ドライバ

あらすじ

「諸君が、一度でも私の名を呼べば、どんな密室からも抜け出してみせよう」

いかなる状況からも奇跡の脱出を果たす天才奇術師・有里匠幻が、衆人環境のショーの最中に殺された。

しかも遺体は、霊柩車から消失。

これは匠幻最後の脱出か?

幾重にも重なる謎に秘められた真実を犀川・西之園の理系師弟が解明する。

感想

本作は第7作目『夏のレプリカ』と対になっており、奇数章のみとなっています。

同時に起こった2つの事件を2冊に分けており、『夏のレプリカ』は本作になかった偶数章で構成されています。

章題もすべて”奇”という文字から始まっており、一貫性がみられますね。

(奇趣の予感、気絶の舞台、奇怪な消失など)

本作ではキーワードとして”名前”という言葉があります。

人は何のために生きているのか、という疑問に対し、

呼吸をするため、思考のためなど様々な考えがあるが、

それらを象徴するものはすべて言葉であり、記号であり、すなわち、ものにつけられた名前である。

生きる目的とは局所的な領域に、瞬間的な時間だけ存在する記号の解釈であり、言い換えれば、変換手順の一認識である。

と犀川は述べていました。

とても新鮮な考えですね。人間だけが名前という概念を持ち、その名前を高めるために栄誉を求める。

難しい話ですが、本作の犯人は自らが作り上げた有里匠幻という名前のためにすべての犯行を行ったということになります。

彼は皆が認識していた有里匠幻という人形や、有里ミカルという人形を自らの名前のために放棄したことになります。

30年間も自らが操る人形の影に徹しているあたり、確かに天才奇術師といえますね。

有里匠幻のミスディレクションによってトリックの謎が深まりました。

有里匠幻のラストエスケープとして原沼が炎に包まれ自らの命を放棄する際に、珍しく犀川の人間らしさというものが垣間見えました。

内部に複数の人格を持つ犀川ですが、あの時の犀川の言動は中心にいる乱暴で破壊的な人格によるものでしょうか。どうでしょうね。

事件のトリックを皆に説明する西之園に瀬在丸紅子に似たものを感じました。

同じセリフで瀬在丸紅子が説明していたとしてもまったく違和感がありません。

おまけに両手をチューリップのように広げ、そこに顔を乗せる仕草、まさに瀬在丸紅子ですね。

ボクのお気に入りは犀川が車を即決で買う場面。

さすが犀川と思ってしまいました笑

「僕が乗るんだから、ボディの外側の色なんて見えないじゃないか。関係ないよ。」

いかにも犀川らしい言葉、あーおもしろ笑

大人になるほど、こんな素敵は少なくなる。努力して探し回らないと見つからない。このまえ、君は、科学がただの記号だって言ったけど、そのとおりなんだ。記号を覚え、数式を組み立てることによって、僕らは大好きだった不思議を排除する。何故だろう?そうしないと、新しい不思議が見つからないからさ。探し回って、たまに少し素敵な不思議を見つけては、また、そいつらを一つずつ消していくんだ。もっともっと凄い不思議に出会えると信じてね……。でも、記号なんて、金魚すくいの紙の網みたいにさ、きっと、いつかは破れてしまうだろう。たぶん、それを心のどこかで期待している。金魚すくいをする子供だって、最初から網が破れることを知っているんだよ。

犀川創平

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