こんにちは、はっこんです。
今回の記事では森博嗣さんの『数奇にして模型』を読んだ感想を書いていきたいと思います。
※本記事は『数奇にして模型』を読まれた方に向けて書いたものです
※以降ネタバレを含みます、ご注意ください
『数奇にして模型』はS&Mシリーズの第9作目です。
登場人物
- 犀川創平・・・・・・・・N大学工学部・助教授
- 西之園萌絵・・・・・・・N大学工学部・4年生
- 国枝桃子・・・・・・・・N大学工学部・助手
- 喜多北斗・・・・・・・・N大学工学部・助教授
- 牧野洋子・・・・・・・・N大学工学部・4年生
- 金子勇二・・・・・・・・N大学工学部・4年生
- 反町愛・・・・・・・・・N大学医学部・4年生
- 大御坊安朋・・・・・・・作家、模型マニア
- 儀同世津子・・・・・・・雑誌記者
- 河嶋慎也・・・・・・・・M工業大学・助教授
- 寺林高司・・・・・・・・M工業大学・社会人大学院生
- 上倉裕子・・・・・・・・M工業大学・大学院生
- 筒見豊彦・・・・・・・・M工業大学・教授
- 筒見紀世都・・・・・・・豊彦の息子、彫刻家
- 筒見明日香・・・・・・・豊彦の娘、モデル
- 遠藤彰・・・・・・・・・医師
- 遠藤昌・・・・・・・・・彰の息子、二年前に自殺
- 長谷川貞生・・・・・・・飛行機模型マニア
あらすじ
模型交換会会場の公会堂でモデル女性の死体が発見された。
死体の首は切断されており、発見された部屋は密室状態。
同じ密室内で昏倒していた大学院生・寺林高司に嫌疑がかけられたが、
彼は同じ頃にM工業大で起こった女子大学院生密室殺人の容疑者でもあった。
複雑に絡まった謎に犀川・西之園師弟が挑む。
感想
本作では模型展示会で発生した事件をもとに物語が進んでいきます。
特に正常と異常や形と型の違いを問われる事件でした。
常識が通用しない事件であり、森博嗣さんの作品の中でも特に犯人が最後まで分からないものになっています。
常識とはこれまでに培った偏見によって成す型であり、それにあてはまらないもの、
その補集合に含まれているものが一般的に異常と認識されるのでしょう。
本作における犯人の心理や行動は異常に該当するものでしたが、それは犯人にとって当然の行為をした結果によるものでした。
犯人も自身の特異性を理解しているため、思惑通りに刑事の捜査から逃れることができました。
本作のトリックを見破るためには常識を疑うこと、先入観に囚われないことが鍵となります。
なぜ首を切ったのか?という疑問を普段から別の角度から考えなければでしたね。
ボクは大御坊が怪しいと思っていたのですが、それは彼の外見だけの話でした。
本作のタイトルは「好きにしてもOK」というダジャレらしいですね。
おそらく犯人の行動が異常と見なされても、「好きにしてOK」ということでは?
本作にはモデラや作家などのクリエイターが多く登場しました。
大御坊が世津子のインタビューに応じたときの言葉が気になりましたね。
模型が完成した時には醒めてしまい、飽きてしまう。
結局作っている最中にだけ所有できる実感がある。
同様に飛行機モデラの長谷川氏はこのように述べています。
模型が模するのは、形ではない。その原型を作り出した人間の精神を汲み取る。しかしだ、まったく同じ工程を踏めば、それはレプリカになる。また、多くの精神に触れるには、制作時間をできるだけ縮小しなくてはならん。だから、型をもすることになる。型とは、製作システムの象徴だ。形に拘ることは、ただのコピィだな。そこにあるものは、想像力の貧困さと、単なる妄想だけだよ。
長谷川貞生
難しいですがなんとなく分かった気がします。
要するに創作の真髄は完成したものにはなく、創作途中の精神が反映されたものにある。
その反映されたものこそが型であり、形との違いであるということでしょう。
なんだか深いですね、保呂草も美術品に対してそのようなことを言っていたのを思い出しました。
しかしこの文章の意味を完全に理解しているわけではありません。
ボクも創作のようなことをしたら分かるのでしょうかね。
本作は他の作品とは違って肉弾戦がありましたね。
犀川がゼムクリップ持っていてよかった笑
普段からゼムクリップを壊していたからこそですね。
決死の救出劇でした。
「もし、彼女を殺したら、僕は貴方を殺します」
犀川なら本当に殺せるだろうなぁ。
そして本作で活躍した金子くん。
落ち着いていてかなり的確な発言をしながらも、シャレを言うシーンも。
4作目の『詩的私的ジャック』から登場していましたが、ここにきてこんな活躍をするとは、、。
西之園よりも金子くんの方が頭良さそうです。
本作で金子くんの好感度が上がりましたね。
その反面、西之園の好感度が若干落ちてしまいましたが、、。
犀川が保健室でお世話になっているところを見るとWシリーズのハギリを思い出しました。
本来ならば逆なのですが、読んでいて笑ってしまいました。
やはり犀川とハギリって似てますね笑
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